これまでに甲状腺峡部の結節は悪性リスクが高いとする報告は複数あった。
甲状腺の上部・中部・下部で比較した初めての報告。
Thyroid nodule location on ultrasonography as a predictor of malignancy
(Endocr Pract. 2019;25:131-137)
P:
細胞診を施行した甲状腺結節219例を後ろ向きに検討
E:
結節が上部に存在(18例)
C:
結節が中部(13例)、下部(149例)、峡部(8例)に存在
O:
甲状腺上部の結節では、下部の結節と比較して悪性のリスクが高い。
(OR = 4.65)
この報告では、中部・峡部は下部と比較して有意差は出なかった。
考察で述べられていること
- 中・下甲状腺静脈が鎖骨下静脈・腕頭静脈にまっすぐ還流しているのに対して、上甲状腺静脈は蛇行して内頚静脈に還流している。
- その結果、静脈のうっ滞から活性酸素種への暴露が増加し、腫瘍促進変異を起こしやすくなる可能性が示唆されている。1)
その他の報告
- 2020年の Thyroid では、3313例の甲状腺結節の後ろ向き検討で癌のリスクは峡部で最も高く、OR = 2.4 とされている(最もリスクの低い下葉と比較して)。2)
- 別の報告では、峡部に甲状腺癌が多い理由として峡部と両葉の発生学的な差異、体表に近く細胞診が容易なため nondiagnostic の結果が出にくい、などが挙げられている。3)
まとめ
- 甲状腺結節の評価では、結節の性状だけでなく局在も意識してフォローアップすべきと考えられる。
参考文献
1) Redox Biol. 2016;8:91-97
2) Thyroid. 2020 Mar;30(3):401-407.
3) Cancer Cytopathol. 2020 Aug;128(8):520-522.