内分泌専門医のブログ

臨床で役立ちそうな論文をまとめていきます。

原発性アルドステロン症に対するミネブロの効果【Hypertens Res. 2020】

2019年、ミネブロ(エサキセレノン)原発性アルドステロン症(PA)の薬物治療の選択肢に加わった。

 

 

ミネブロの、PAを伴う高血圧患者に対する初めての報告。

 

 

Efficacy and safety of esaxerenone (CS-3150), a newly available nonsteroidal mineralocorticoid receptor blocker, in hypertensive patients with primary aldosteronism

 

(Hypertens Res . 2020 Nov 16. doi: 10.1038/s41440-020-00570-5. Online ahead of print.)

 

 

P:

日本内分泌学会のPA診断基準を満たした44例。

PRAは0.49 ± 0.51 ng/ml/h、PACは229.8 ± 396.7 pg/ml。

片側病変/APA 4例を含む。

 

除外基準は、血清K <3.0 mEq/L、≧5.1 mEq/L など。

 

 

I:

ミネブロ 2.5mg で開始し、血圧≧120/80 mmHg、血清K <5.1mEq/L、

ベースラインからのeGFRの減少<30%であれば、2-4週後に5mgに増量。

併用可能な降圧剤はCCB、α遮断薬のみ。

 

 

C:

なし。

 

 

O:

 

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収縮期血圧は 17.7 mmHg、拡張期血圧は 9.5 mmHg の低下を認めた。

 

 

 

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eGFR は 8週までに 8.1 ml/min/1.73m^2低下し、12週では横ばいだった。

 

PRA は +0.60 ng/ml/h 上昇した。

 

 

 

薬剤関連副作用は高K血症、腎機能低下が2例ずつだった。

 

ミネブロはPAに対して有効・安全に使用可能と結論づけられた。

 

 

 

 

補足

 

  • MR受容体拮抗薬の選択肢は、アルダクトン(スピロノラクトンセララ(エプレレノン)ミネブロ の3つ。

 

  • アルダクトンには性ホルモン関連の副作用があり、セララはCCr<50ml/minの高血圧患者では使用できない等の制約がある。

 

  • また、セララは作用時間の短さから分2で投与が望ましい(1)が添付文書上の用法は分1となっている。

 

  • ミネブロは性ホルモン関連副作用が少なく半減期が18.6時間と長く、添付文書上の腎機能の制約も比較的緩い(eGFR <30 で禁忌)

 

  • ミネブロはアルダクトン・セララの短所を補う特徴を持っている。長期使用の安全性、有効性に関する報告を待つ。

 

  • なおセララからミネブロへの切り替えの際は、ミネブロのインタビューフォームを参考に セララ 50mg ⇒ ミネブロ 2.5mg を検討する。

 

 

参考文献

(1) Current Hypertension Reports. 2019; 21: 22

 

甲状腺眼症の発症予防にスタチンは有効?【JCEM 2021】

近年、甲状腺眼症のリスクファクターとして高コレステロール血症の存在が示唆されている。(1)

 

スタチンの投与によって甲状腺眼症の発症は抑制できるのだろうか?

 

 

Statins Decrease the Risk of Orbitopathy in Newly Diagnosed Patients with Graves' disease

(J Clin Endocrinol Metab. 2021 Feb 9;dgab070. doi: 10.1210/clinem/dgab070. Online ahead of print.)

 

 

P:

スウェーデンの National Board of Health and Welfare からデータを抽出。

2005-2018年の間に新規にバセドウ病と診断された34894例を後ろ向きに検討。

 

E:

スタチン使用(5574例)

 

C:

スタチン非使用(34409例)

 

O:

甲状腺眼症の発症の指標として、

甲状腺眼症に対する外科的治療」を使用。

 

スタチン使用群のadjusted HRは、

(年齢、性別、治療[甲状腺摘出・放射性ヨード・抗甲状腺薬]で調整)

 

  • 全体0.87 (CI: 0.76-1.00), p=0.04
  • 女性0.91 (CI: 0.79-1.06), p=0.24
  • 男性0.78 (CI: 0.58-1.04), p=0.09

という結果だった。

 

スタチン使用群で、甲状腺眼症の発症率は有意に低かった。

 

 

しかし、本研究のlimitationとして、

 

  • 甲状腺ホルモン、TRAb、喫煙に関するデータがない
  • 眼症の重症度、活動性に関するデータがない

 

等が挙げられている。

 

 

 

考察

  • 甲状腺眼症の発症/増悪リスクとして、喫煙甲状腺機能低下症放射性ヨード治療TSHレセプター抗体のほかにコレステロール血症が挙げられている。(2)

 

 

  • 基礎研究では・・・(Reviewによると、)遊離脂肪酸はIL-6、TNF-α、活性酸素種の放出、肝細胞のミトコンドリア・小胞体の機能異常を介して甲状腺眼症の病態に関わっており、スタチンの使用は炎症の抑制に働く可能性が報告されている。(3)

 

 

まとめ

  • 甲状腺眼症の発症抑制を目的として、積極的にスタチン投与を推奨する根拠は現時点ではなさそう。

 

 

  • しかし高コレステロール血症と甲状腺眼症との関連に関する報告は蓄積されてきており、スタチンの予防効果に関して前向き研究が待たれる。

 

 

参考文献

(1) Thyroid. 2018; 28: 386–94.

(2) Front Endocrinol (Lausanne) . 2020 Nov 30; 11: 615993.

(3) Front Endocrinol (Lausanne). 2020 Jan 22; 10: 933.

 

甲状腺全摘後、チラーヂンSの至適補充量は?【Thyroid 2017】

甲状腺全摘後にチラーヂンSを投与していて、

  • FT3を正常化しようとしてチラーヂンSを増量すると、TSHが抑制される
  • TSHが抑制されないようにチラーヂンSを減量すると、FT3が低値になる

ケースがある。

 

全身の代謝に及ぼす影響をニュートラルにするための適切な補充量はあるのだろうか?

 

隈病院からの報告。

 

 

Biochemical Markers Reflecting Thyroid Function in Athyreotic Patients on Levothyroxine Monotherapy

(Thyroid, 2017; 27(4): 484-490)

 

 

P:

甲状腺乳頭癌で甲状腺全摘術を受けた133例

バセドウ病など甲状腺機能異常は除外

 

I,C:

術後、乳頭癌再発リスクに応じて設定されたTSH管理目標値(ATA 2009)にしたがってチラーヂンSを投与。

  • 高リスク患者 72例:TSH≦0.03μIU/ml
  • 中リスク患者 72例:0.03<TSH≦0.3μIU/ml
  • 低リスク患者 72例:0.3<TSH≦5μIU/ml

術後12か月時点での代謝プロファイルを評価。

 

O:

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  • TSH≦0.03μIU/ml のグループでは、心拍数SHBG(肝での甲状腺ホルモン作用のマーカー)、BAPなどが増加
  • 0.3<TSH≦5μIU/ml のグループでは、LDL-C増加TRACP-5b低下

 

  • 0.03<TSH≦0.3μIU/ml のグループ(FT3が術前と比較して変化なし)では、術前後ですべての代謝マーカーの変化を認めなかった。

 

 

考察で述べられていること

 

 

補足

甲状腺全摘後に相対的にT3欠乏状態となる機序として下記が想定されている。

  • T4の100%が甲状腺から分泌されるが、
  • T3は20%が甲状腺からの分泌で、80%は甲状腺外でT4から変換されてできる。(2)

 

 ATA2014では、TSHを基準値内にするようL-T4を投与することが推奨されている。
中枢性ではFT4が基準値の上半分となるように)

  

2019年のEndocrine のレビューによると、(3)

  • 現状ではすべてのガイドラインで、補充療法にはL-T4が推奨されており、L-T3の追加については現時点で明らかなメリットを証明したRCTはない。
  • L-T3を追加しても認知機能・QOLなどに変化を認めなかったとする報告や、L-T3追加によって17年間の観察で心血管イベントの増加を認めず抗不安薬の処方が増えたとする報告がある。

 

 

参考文献

(1) Thyroid, 2014; 24(12): 1670-1751

(2) Am J Physiol, 1990; 258: 715–726

(3) Endocrine, 2019; 66: 70–78

腎臓専門医試験の対策

平成末期に合格した者です。ご参考になれば幸いです。

 

 

症例レポート作成

腎生検を行った症例を中心に作成しました。

考察はExcelの枠内にミッチリ入るくらい書きます。

国内ガイドライン、KDIGOガイドラインに沿って

自分の症例の診断・治療を述べていくとまとまりやすいと思います。

患者の病態理解・治療受け入れに関する記載も大切です。

 

 

試験勉強

3か月くらい前から問題集を始めました。

2週できれば十二分です。

 
  • New専門医を目指すケース・メソッド・アプローチ 腎臓疾患

臨床問題が豊富です。病歴と採血・検尿所見から鑑別診断を挙げていくトレーニングになります。

 

  • レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第3版

解けなかった問題を文献などで調べる前に、この本で概要をつかめます。

基礎医学の問題が結構出題されますが、この本で足りると思います。

 

これらはホームページから確認しておきます。

 

 

試験当日

試験時間は十分にあるので、時間切れになることはないとは思います。

知っているか知らないか、という問題ばかりで

考えて正解が導けるものではありませんでした。

 

なお腎臓専門医試験に限りませんが、

臨床問題では問題文の後半にいくほど特異的な検査結果が記載されています

なので、問題文は後ろから読む(ついでに選択肢も読む)と効率的です。

 

 

 

 

DPP4阻害薬は緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の内因性インスリン分泌能保護に有効か【Diabetes Ther . 2017】

 

  • 糖尿病治療薬の選択肢はTokyo Studyの後で飛躍的に増加したが、膵保護の観点から現在SPIDDMの治療の最適解はあるのだろうか?

 

Possible Long-Term Efficacy of Sitagliptin, a Dipeptidyl Peptidase-4 Inhibitor, for Slowly Progressive Type 1 Diabetes (SPIDDM) in the Stage of Non-Insulin-Dependency: An Open-Label Randomized Controlled Pilot Trial (SPAN-S)

(Diabetes Ther . 2017 Oct;8(5):1123-1134.)

 

P:

インスリン非依存状態のSPIDDM患者 (11例)

 

I:

シタグリプチン 50mgで治療開始し、HbA1c<7.0%を目標に100mgまで増量し、達成できない場合はメトホルミン・αGIを追加

(6例)

 

C:

ピオグリタゾン 15mgで治療開始し、HbA1c<7.0%を目標に30mgまで増量し、達成できない場合はメトホルミン・αGIを追加

(5例)

 

O:

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ベースラインのBMIは23程度、HbA1cは7.5%程度

 

OGTTでのΣCペプチドを比較したところ、

48か月の追跡で、シタグリプチン群とピオグリタゾン群で有意差は出なかった。

 

 

続いて、Tokyo Studyでのインスリン群、SU群との比較が行われた。

 

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48か月のフォローアップで、

シタグリプチン群ではインスリン群、SU群と比較して優位にΣCペプチドが高値であった。

 

補足

  • 海外ではlatent autoimmune diabetes in adults (LADA)の名称で報告されることが多い。LADAの診断基準は、(文献2)
  1. 30歳以上での発症
  2. 膵島細胞に対する抗体
  3. 診断から6か月以上インスリン治療を必要としない 

 

  • 日本糖尿病学会は、遺伝的背景が日本人と異なることなどからLADASPIDDMの異同を論じることはできないとしている(文献3)

 

  • LADAと2型糖尿病の患者にデュラグルチドを使用してHbA1cの低下を比較した報告はあるが、内因性インスリン分泌能の保護についての検討はない(文献4)

 

 

まとめ

SPIDDMの内因性インスリン分泌能保護にあたって、

SU薬を使うよりはDPP4阻害薬を使ったほうがよいことが示唆された。

 

  • GLP-1受容体作動薬についてはどうか?
  • インスリン抵抗性改善薬(メトホルミン)をまず使用すべき?

 

これらについては現時点でエビデンスはない。

 

また続報が出たら確認する。

 

 

参考文献

(1) J Clin Endocrinol Metab. 2008;93: 2115–2121

(2) Diabetes. 2005;54(Suppl 2):S68-S72

(3) 糖尿病. 2013;56(8):590-597

(4) Diabetes Obes Metab. 2018 Jun;20(6):1490-1498.

甲状腺上部の結節は悪性リスクが高い【Endocr Pract. 2019】

これまでに甲状腺峡部の結節は悪性リスクが高いとする報告は複数あった。

 

甲状腺上部・中部・下部で比較した初めての報告。

 

Thyroid nodule location on ultrasonography as a predictor of malignancy

(Endocr Pract. 2019;25:131-137)

 

P:

細胞診を施行した甲状腺結節219例を後ろ向きに検討

 

E:

結節が上部に存在(18例)

 

C:

結節が中部(13例)、下部(149例)、峡部(8例)に存在

 

O:

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甲状腺上部の結節では、下部の結節と比較して悪性のリスクが高い。

(OR = 4.65)

 

この報告では、中部・峡部は下部と比較して有意差は出なかった。

 

考察で述べられていること

  • 中・下甲状腺静脈が鎖骨下静脈・腕頭静脈にまっすぐ還流しているのに対して、上甲状腺静脈は蛇行して内頚静脈に還流している。
  • その結果、静脈のうっ滞から活性酸素種への暴露が増加し、腫瘍促進変異を起こしやすくなる可能性が示唆されている。1)

 

その他の報告

  • 2020年の Thyroid では、3313例の甲状腺結節の後ろ向き検討で癌のリスクは峡部で最も高く、OR = 2.4 とされている(最もリスクの低い下葉と比較して)。2)
  • 別の報告では、峡部に甲状腺癌が多い理由として峡部と両葉の発生学的な差異、体表に近く細胞診が容易なため nondiagnostic の結果が出にくい、などが挙げられている。3)

 

まとめ

  • 甲状腺結節の評価では、結節の性状だけでなく局在も意識してフォローアップすべきと考えられる。 

 

参考文献

 1) Redox Biol. 2016;8:91-97

 2) Thyroid. 2020 Mar;30(3):401-407.

 3) Cancer Cytopathol. 2020 Aug;128(8):520-522.

原発性副甲状腺機能亢進症で、副甲状腺摘出術後に耐糖能異常が改善【Nutrients. 2020】

Improving Glucose Homeostasis after Parathyroidectomy for Normocalcemic Primary Hyperparathyroidism with Co-Existing Prediabetes

(Nutrients. 2020 Nov 16;12(11):3522)

 

P,C:

血清補正Ca正常の原発副甲状腺機能亢進症で、

前糖尿病状態(空腹時血糖 101-125mg/dl、75gOGTT2時間血糖 140-199mg/dl、HbA1c 5.7-6.4%)

合計32例

 

I:

  • 副甲状腺摘出術を施行(16例) もしくは
  • 経過観察(16例)

stage 3以上の慢性腎不全などは除外。

いずれのGroupも天然型VDを補充し、充足状態(25OHD≧30ng/ml)としている。

ビタミンD欠乏によるPTHへの影響を除外するため)

 

O:

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Group A (副甲状腺摘出)

Group B (経過観察)

 

  • Group Aでは、術後32週時点で空腹時血糖および75gOGTTT2時間血糖が低下
  • Group Bでは変化を認めなかった。
  • Group A, BともにBMIHbA1cに有意な変化は認めなかった。

 

 

考察で述べられていること

 

まとめ

  • この報告では術後の耐糖能異常の改善は軽度にとどまった。
  • 長期的なHbA1cの変化が観察されれば無症候性PHPTの手術適応の判断基準の一つになるのかも知れない。

 

 

 

参考文献

(1) Clin. Endocrinol. 1992, 37, 147–155

(2) Metabolism 1997, 46, 1171–1177.